虫歯治療を開始してみたものの、いざ虫歯の箇所を削り終えた時や型取り前に、舌で治療箇所を触れてみたら、ご自身の想像以上に穴が大きいと感じたことはありませんか?
大きな穴を舌で触れて不安になる患者さんの気持ち良く分かります。
今回は、どうして歯科医師はそんなに大きく削ってしまうのか?のお話です。
そもそもなんで削るのか?
虫歯治療の基本は、『感染した部位を完全切除』をして、『除去した部分を人工物で補う』の二つです。その治療の流れで、『歯を削る』という行為をしていくのですが、削る目的は大きく分けて2つに分けれます。
まずは感染した部位を取り除く目的で。もう一つは、修復物を長期に口腔内で保たせる目的で削ります。
私たち歯科医師が、歯を削る理由としてこの二つに絞られるのです。
いずれの理由にしても、患者さんが『あれれこんなに削ってしまうの?』と思ってしまうわけを歯科医師の立場から解説していきます。
虫歯は入り口は小さく、中で大きく。
虫歯の入り口は非常に小さい穴ですが、中で大きく広がっていることが非常に多いです。
患者さん自身が虫歯の穴に気がついて歯科医院を訪れた際には、その穴から想像つかない容積で虫歯が進行しています。
そのため、虫歯の治療を開始して、完全に虫歯の箇所を取り除き終えた後の歯を舌で触ると、想像以上に大きく削られる結果になり、みなさん驚くことが多いのです。
入り口は小さいですが。。 |
削り進めるとこれだけ、虫歯が進行。 |
う蝕検知液を使用。 |
虫歯の除去後。これだけ取り除きます。 |
蛇足になりますが、この虫歯の除去に関してですが、虫歯の削り残しは修復後の虫歯の再発に繋がる可能性があり、逆に削りすぎは無用に神経が口腔内に近づく結果となり、神経が損傷してしまう可能性があり非常に繊細な作業になります。
削り残しや削りすぎを防ぐ為に、当院ではう蝕検知液を使用しています。
修復物を長期的に維持させる為に!
感染した部位を取り除いたあとには、必ず、修復物を入れるわけですが、その修復物を長期的に維持していくことを患者さんも、そして歯科医師も願っており、歯科医師はその為にいろんな工夫をします。
神経を取った歯では、根管治療中はとりあえず残していた薄い歯質に細かいひび割れがあり、長期的な維持を考えるとその薄い部分を削らざる得ないこともあります。また根管治療においては全体を削って被せ物を入れるのが、王道とされており被せ物を装着する為に、下の写真のようにかなりの除去量になることがあります。
また神経が残っている歯の虫歯治療の際でも、修復物の種類によっては、修復物の維持の為に健全な部位を犠牲にして歯を削らないといけないことも多々あります。
特に、金属の修復物などは、修復物を維持させる為に大きく削らざる得ないのが現状です。
根管治療後。周囲に多くの歯質がある。 |
全周を削って、被せ物を入れる前。 |
削る量を最小限にするためは。。
感染した部位の除去に関しては、削る量をやみくもに最小限に。という訳には行かず、適切な量の削除量が必要になります。
対して、修復物を維持する為の健全歯質の削除に関しては、修復物方法により削除量をある程度変化できます。
以前の技術では、大きく歯を削って、被せ物にしないと人工物が取れてしまうことや、小さな金属の詰め物においても修復物が取れないようにより多くの健康な部分を削除せざる得ないことが多々ありました。
そういったケースにおいても、接着技術を応用することで無駄に健康な部位を削除しなくても修復物を維持機能させることが可能となっています。近年の接着材料の進化には目覚ましいものがあります。
接着技術の効果を最大限に発揮するために、御茶ノ水 杏雲ビル歯科ではセラミックの接着の際には、ラバーダム防湿を積極的に使用しています。
一番、最小限に削除量を抑える方法は、予防と早期発見です。つまり虫歯が大きく進行する前に介入して感染部位の拡大を防ぐのです。
しかし一度、虫歯ができてしまったら、その部位は徹底的に除去し、除去した後に接着技術を応用した修復物を使用して、できるだけ少ない切削量で治療を完了させることが、歯の寿命を伸ばすこことつながると考えています。
修復物の決定時に歯科医師とよく相談するのが肝心です。